2005年10月05日

阪神を金儲けの道具にする男

村上世彰という御仁は、世の中を相当ナメたお方のようで、
阪神電鉄株を大量購入して38.13%もの株式を取得し
筆頭株主になったことは既に各方面で報じられているが、
それに乗じて阪神電鉄の子会社でもあり、
言わずと知れたプロ野球セントラルリーグの人気球団
阪神タイガースの株式を上場しようと目論んでいる
らしい。

欧米にはプロスポーツチームの株式を上場しているケースもある。
最も有名なのは、イタリアのプロサッカーリーグ・セリエAの
ラツィオとASローマのケースや、
イングランド・プロサッカーのプレミアシップリーグの名門
マンチェスター・ユナイテッドのケースなどだろう。

ただ、これらのケースは必ずしもうまくいっているわけではない

ラツィオにせよ、ローマにせよ、確かに株式を上場してはいるが
彼らが目論んでいるほどの資金を回収できてはいない
ことにラツィオここ数年、毎年のように経営危機が叫ばれ
選手へのサラリーが払えなくなるなどというニュースが
昨季なども何度か聞かれている。

これにはサッカー選手に対する資金投下の問題がある。
サッカー選手の完全移籍による獲得には非常に高額の資金が必要で、
特に若い選手を移籍で獲ろうと思うと、選手に対する年俸だけでなく
独自係数により算出される移籍金を支払う必要もある

これを抑える意味でレンタル移籍という手法も用いられるが、
相手先によっては完全移籍での引き取りを希望する場合もあり
移籍による選手獲得には金銭的なリスクが常につきまとう

また、無名な選手の獲得であればそうでもないかもしれないが、
世界的に名前を知られた有名選手になると、年俸や移籍金が高騰し、
場合によっては○十億円単位の金額が動くことになる。
(先日のロビーニョの例を思い返してもらえばわかるだろう)
そうした資金を捻出するのは並大抵のことではできない。
株式市場への上場は、そうした資金を捻出するための一つの方法論だが、
ラツィオやローマが思ったほどのビッグネームを獲得できていない
という現状を見るに、そうした目的での上場がうまくいっていない
という言い方ができる
かもしれない。

ただ、まだこの2クラブは、クラブを支えているサポーターが
表立って反対を唱えていないだけマシな方
かもしれない。

マンチェスター・ユナイテッド(マンU)の場合は、上場した株式が動いて、
つい最近、実際に筆頭株主(事実上のオーナーが代わったが、
この新オーナーに対する風当たりが非常に強い
マンUの新オーナーはアメリカ人投資家で、
NFLのタンパベイ・バッカニアーズのオーナーでもある
マルコム・グレーザー氏
なのだが、
マンUサポーターはこの買収に強烈な嫌悪感を抱き、
様々な形で抗議行動に出たこともある

現在でもグレーザー氏への風当たりは非常に強いと聞いている。

以上を踏まえつつ、村上ファンドと阪神の話に戻ろう。
村上ファンドが先月(9月)末に
阪神球団の株式上場を阪神電鉄側に提案した際に、
こうした海外の事例を参考にした提案書を作ったらしいが、
もしそうだとしたら、村上ファンドは意図的に情報を隠しつつ
手前勝手な論理による独善的な提案を行っている
可能性がある。

例えば、マンUのケースにおけるサポーターの反対運動について
村上側はそれをキチンと織り込んだ上で提案書を作成したかどうか。
村上側は阪神ファンを安定株主にと言うが、
当の阪神ファンから、マンUサポ同様に反対されないために
一体どのような対策を講じるのか。
また、株式を上場するということは、
村上が阪神電鉄に対してやったように、
当然その株式を大量購入される可能性もある。
しかし、野球協約上では球団の株式を保有する際に
様々な報告や条件を課されるだけでなく、
オーナー会議などによって認可を受ける必要性も生じる。

こうしたことについて、村上はどの程度認識があるのか。
恐らく彼はそうした規則や約定の上っ面程度を見て、
これなら大丈夫だろうなどと安易に思い込んで
そのような提案をしたのではないか
と推測される。

何より問題になるのは、阪神電鉄という会社の経営が
阪神タイガースという球団の存在に大きく依存している現状で、
これを切り離すような真似をした場合、
阪神電鉄そのものの企業価値の低下を招く恐れが生じることについて、
村上が如何なる認識を有しているのかが全く明らかになっていない

純粋な投資」だの「企業価値向上の一助」だのという
空々しいフレーズだけで全てを押し切れるわけではない
村上にはこれだけの投資をしたことについての説明責任がある。
それは彼のファンドに依存する人間に対するものだけではなく、
阪神電鉄や阪神タイガース、そしてその多くのファンに対しても、
等しく説明をしなければならない責任である。

村上自身にすればただのマネーゲーム感覚なのかもしれないが、
阪神タイガースという存在は既に相当な社会的な認知を得ており、
彼のマネーゲームの材料としてだけで終わるものではない
阪神タイガースをバブル的な投機材料として扱うことは
村上とそのファンドの論理では許されても、
世の阪神ファンの多くにとっては許されないことである。

ちなみに阪神球団社長は上場について「考えていない」と発言しているのだが、
この社長人事にすら口を出し始めているらしい。
いくら筆頭株主とはいえ、そこまで要求することが道義的に許されるのか。

阪神電鉄側にも多少の旨味はあったらしいが、
それはそれこれはこれだ。

いずれにせよ、今回の阪神球団株上場提案の真意がどこにあるか
阪神電鉄側はしっかりと見極めなければならないし、
それが結局、村上とそのファンドだけを利することにしかならなければ、
毅然とした対応を取っていく必要があろう

それにしても、大阪出身で自称「阪神ファン」の男が、
そのファンであるはずの球団を元に金儲けを目論もうなどというのは、
ただの酔狂以外の何物でもないと思うのだが。
posted by KAZZ at 20:57 | 島根 ☁ | Comment(2) | TrackBack(3) | 国内事件・社会
この記事へのコメント
小生阪神タイガースの昔からのファンですが、今回の村上ファンドの株買占めには大反対です。
彼は私の灘の後輩らしいですが、口ではファンといっていますが本心は金儲けのような気がしてなりません。灘の校是を思い出して欲しいと思います。先ず世間に信用されるだけの実績を作ってからにして下さい。こんな生徒が出て、嘉納治五郎先生も口惜しい思いをしておられるでしょう。
そのお金をもし慈善事業に寄付するというなら許してもいいですが・・・・・大先輩より
Posted by 飯田寿祥 at 2005年10月07日 21:00
村上氏が後輩なのですか。これまたどえらい後輩ですね。

端的に言って、今回に限らず
村上氏とそのファンドの行動には
金儲けの側面があるのは否めません。
それは投資ファンドである以上、仕方のないことですが、
一方で今回のようなケースには強烈な違和感を覚えます。

もしも彼が提唱する「ファンを株主に」という概念が、
ヨーロッパ(特にスペイン)のサッカークラブの一部で導入されている
ソシオ制度(サポーターがクラブ会員となってクラブの下支えをする制度)に
近いものであるのならば、一考に値するとは思うのですが、
どうもそうではないらしいので、私も今回の件については賛成できません。
Posted by KAZZ at 2005年10月07日 21:44
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われは非情か
Excerpt: これからの経営は、”情より理”が重要だ。 村上世彰氏率いる投資ファンド(村上ファンド)が阪神電鉄の株式を買い進めている。タイガースファンも穏やかでないらしい。 彼が動くと、いつも経営者たちは、揃って反..
Weblog: Hotta World:: 「活・喝・勝」
Tracked: 2005-10-06 08:18

阪神タイガースはいっそのこと宗教法人にしよう
Excerpt: 最近は政治的に大きな事件がないおかげか、村上ファンドによる阪神電鉄株取得と、それに関する買収ネタが新聞に載っており、否が応でも目に付く。 ことこれに関しては、私自身阪神ファンなので、どうにもコメントし..
Weblog: 桜日和
Tracked: 2005-10-06 11:55

村上ファンドについての建前と本音
Excerpt: 最近巷を騒がせている村上ファンドだが、実は私が通う大学でも私の実家でもその話題で
Weblog: 道楽者の徒然日記
Tracked: 2005-10-07 15:59
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